第11章 空蝉
「…なんか、べとべとだね?」
「…うん…シャワーしてえな…」
「声、我慢出来なかった…」
「…下に、聞こえたかな?」
「…おじさんたちも…盛り上がってたりして❤」
「…やめろっ"(-""-)"」
「フフフ、イイじゃん、だって翔くん、それで生まれたんだよ~?」
まあ、そうだけどさ…
親のそういうのって、想像したくもないじゃん…
「……感謝してる、翔くんをこの世に作ってくれたことに…心から…」
「作って、ってさ、生々しいわ…」
潤は、笑う俺に近付き、そっと唇を重ねた。
ちゅっ、という可愛い音だけ残して離れた彼は、俺の顔をじっと見つめながら、
「…会えて良かった、翔くんと…」
そう言った。
その目が…吸い込まれそうな大きな瞳が、
綺麗に潤んで俺を映している。
何でそんなこと言うんだよ…
まあ、3週間も音沙汰なしで…
こいつも実際、いろいろ思ったんだろうし、
恨み事も言いたいだろうに、何も言わないで…
なんかさ…
健気っつ~か…罵ってくれた方が気が楽だったのかもしれないけど…
俺が気が楽になっちゃいけないんだ。
罪をしっかり見つめて、生きていかなきゃいけない。
後悔は…してない。
潤には言えないけど…
あの瞬間は確かに、智くんを愛したいと願ったから…
そして今は…
これからもずっと。
潤を…潤だけを……
俺は潤の頭に手を回し、
おでこをこつんとぶつけた。
色んな気持ちを込めて…潤に言った。
「潤…ありがと…」
「翔くん…俺…俺……」
綺麗な瞳が涙で溢れそうで…
俺は思わず抱き締めた。
髪をそっと撫でると潤はくすんと鼻をすすった。
愛しいその塊を暫くの間抱き締めてから、
「シャワーしに行こうか?」
と言った。
「うん!」
潤は、もう笑っていた。
最高の笑顔で……