第11章 空蝉
「潤…」
俺は潤の身体を離して、顔を見ようとした。
でも潤は、ますますしがみ付いて来て、
俺の胸に顔を埋めた。
「翔くん!!俺だけにして!」
「潤…」
「智との事は、俺、忘れるから、だから…」
「……」
「俺のことだけ、愛して…」
「潤…ごめん…俺…」
潤は、俺の顔を見た。
大きな目に、涙を浮かべて…
「ごめんなんて、聞きたくないよ…
みじめになるじゃん…」
「…潤…」
潤は、俺の首にしがみ付いたまま、
「もういいんだ…何も言わないで?聞きたくないから…俺だけを…俺のことだけを愛してるって…そう言って!
そう約束してくれれば、それでいいから」
耳元でそう言った潤は、小さく震えてて…
さっきまで、平気なふりしてたんだ。
こんなに傷付いて…
俺は改めて、自分のしたことの罪深さを思い知る。
潤…もう繰り返さないから…
お前だけを…
お前だけを大切にするから…
だから……
「潤…顔、見せて?」
「……」
おずおずと顔を上げた潤の唇に自分のを重ねた。
そこから伝わる熱だけを感じたくて、
俺はそのまま、そっとゆっくり啄んだ。
目を閉じて、俺に委ねる潤…
あの日、智くんと俺を見て、
どれだけ傷付いたか…
あの日、彼を悲しみの淵へ突き落した俺の責任として…これからは潤を…
潤だけを愛し続けていきたい…
「…潤…」
一度離れて見つめ合ってから、
今度は深く口づけた。
いきなり舌を絡め合い、
咥内を激しく貪ると、潤は切ない吐息を漏らした。
息を吸うのももどかしく…
お互いを求めあう口づけは、
次第に脳髄までをも痺れさす…
…あ、親…寝たのかな?
まあいっか…
声、出させない様にすれば…
……出来る気がしない…
だって俺、もう、止めらんなけど…