〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第74章 望月の恋人《後編》❀徳川家康❀
『到底、理解しがたい話だな。時空を超える穴が、天に開くなんて』
『そう言われても仕方ありません。ですが、事実は事実です』
『……信じ難くても、確かにそれは一筋の望みだ。佐助、あの子を元の世に返して』
『家康さん……』
『迷う必要はない。じゃなきゃ、美依は……』
『俺も、彼女には生きて欲しい。だけど…彼女は嫌だと言っていました。貴方が居るからです、家康さん。こんな事言いたくないけど……』
『……だったら、今の世に残る理由を無くすしかないね』
『え……?』
『約束して。あの子を必ず元の世に返すって。夜明け前…天守に美依を迎えに来て、絶対』
『家康さん……』
『俺は、美依が泣いても怒っても、俺を恨んでも、美依に生きて欲しい。だから頼む』
────身の切れる思いがした
あの子を手放すなんて……
俺は出来れば一生したくなかった。
でも、今の状況では、あの子を確実に守れる自信が無い。
こんな過酷な状況にあの子を置くくらいなら。
どこの世でもいい、生きていて欲しい。
生きる場所が別の世でもいい。
二度と逢えなくても構わない。
それでも、美依だけは──……
俺の傍じゃなくてもいいから、
笑っていてほしいんだ。
ごめん。
あんたをお嫁さんにすると言ったのに。
あんたはあんたの世に戻って、
誰かと幸せな家族となってくれ。
俺は守ってあげられなかった。
いや……こういう守り方しか知らないから。
最後に思い出ほしいのは、俺の方。
俺なんか忘れて、
生きて、
笑って、
花開いて、
あんたらしく、生きて行って。
────だから、さようなら