〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第68章 蜜な想いはくちびるから《後編》❀徳川家康❀
「痛い、家康っ…!」
「……」
「いえ、やす、待っ…!」
美依の言葉も聞かず、陽の落ち始めた城の廊下を、美依の手を引っ張りずんずん進んでいく。
家臣達だったり女中だったり、三成だったり。
途中ですれ違った奴らは、みんな目を丸くして俺達を見ていた。
でも、そんなのは関係ない。
この胸に燻る、未消化の熱を早く放出したくて。
────美依を、この唇で攻め立てたい
「あっ……」
俺は人気のない部屋まで来ると、中に美依を押し込み、静かに襖を閉めた。
薄暗い部屋の中。
なんの明かりもなく、夕陽が障子から差し込んで、仄かに二人の姿を赤くするだけだ。
困惑に瞳を揺らす美依の肩を掴み、壁に押し付けて。
腕で美依の顔を囲うように閉じ込めながら…
俺は、刺すような眼差しを美依に向けた。
「美依、何あれ」
「家康……」
「なんで政宗さんと口づけしてたの。好きなの、政宗さんの事」
「いえや……」
「恋仲って事?ねぇ…答えなよ、美依」
片手で美依の顎を掬い、親指を下唇に這わす。
そのしっとりと濡れた、艶やかな唇。
それは、俺が欲しくて欲しくて、焦がれたものだった。
────でも、それを塞いだのは俺ではなかった
嫉妬の炎が、胸の中で焼け焦げる。
熱くて熱くて、どうにかなってしまいそうだ。
「……っ」
押し黙って、何も答えない美依。
それは俺の問いに『その通り』と言っているのか。
それは、ものすごく……気に入らない。
俺はギリッと一回歯を噛み締めると…
何も言わないその唇に、有無も言わさず噛み付いた。
「んっ…んぅ……!」
強引に舌をねじ込み、舌を絡めとってやれば、美依は僅かな唇の隙間から吐息を漏らす。
唇に吸い付き、美依を攻める水音が静かな部屋中に響いて…
逃げないように美依の身体を押さえ付けては、自分の身体を美依に押し付ける。
微かに目を開いて美依を見てみれば。
だんだん瞳が潤み、ふわんと蕩けてきて…
何、感じてるの?
馬鹿みたいに素直な反応が逆に苛立ちを煽り、加虐心をさらに加速させていく。