〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第13章 Xmas SS 〜白い聖夜の天使は君〜 ❀光秀&家康❀
(家康、やっぱり帰って来れなかったんだな……)
クリスマスの夜。
美依は安土城の部屋で小さくため息をついた。
家康が地方の遠征に行って、早十日。
恋仲として、初めて迎えるクリスマス。
戦国時代にはクリスマスは関係ないと思っていても、家康にクリスマスの話をしたら。
────じゃあ、一緒に過ごそうね
そう、ぶっきらぼうに言ってくれた。
すごくすごく楽しみにしていたけど……
小さな小競り合いの鎮圧に赴いた家康は、まだ帰って来ない。
(…仕方ない、残念がるのは止めよう……)
もうすぐイヴが終わる。
美依は諦めて、寝ようと支度を始めた時だった。
「美依様、夜分遅くに申し訳ございません。家康様がお見えになっております」
襖の向こうから、そう女中さんの声が掛かった。
思わず目を見開く。
家康が来ている、それは。
無事だったのか、会いに来てくれたのか。
思わず心臓の鼓動が高鳴り、それを押さえながら襖に駆け寄った。
「家康っ……!」
────ガラッ!
思わず、乱暴に襖を開く。
途端、目に入ってきた光景に、思わず目を見開いた。
(え………?)
赤い薔薇の花束。
それも、一本じゃない。
数え切れない程の、鮮やかな真紅の薔薇──……
それを手に持っている家康は、少し頬を染めて。
そして、少し不機嫌そうな表情をしていた。
「家康……」
「……めりーくりすます、美依」
「帰って、きたの……?」
「うん、たった今…ただいま」
見てみれば、家康はまだ戦支度のままだ。
遠征から帰って来て、真っ先に駆けつけてくれたんだ。
それを思ったら、ぎゅっと胸が締め付けられた。
「お、おかえりなさい!なんかすごい花束だね」
「うん、美依にくりすますの贈り物。今日一緒に過ごす筈だったでしょ?」
「わぁ…ありがとう、家康!」
「この薔薇の花、108本あるんだ」
「108本!?」
「うん、薔薇って贈る本数によって花の意味が変わるんだって。108本の薔薇の意味、解る?」
(108本の薔薇の意味…?)
見当もつかなくて首を横に振ると。
家康はくすっと笑い、薔薇を一本差し出した。