第10章 帆風
「そっか。じゃあ、和奏はツッキーに謝りたいの?」
木兎さんの言葉に頷く。
蛍に酷いこと言って、ごめんなさいって言わないと。
「でも…木兎さんとの事…蛍が許してくれるはずありません。」
実際、そうだろう。
蛍じゃなかったとしても、こんな状態を笑って許してくれる彼氏など居ないだろう。
「じゃあ、俺が黙ってるって言ったら…、和奏もツッキーに秘密に出来る?今後一生。」
今後一生…蛍に秘密を持って、隣に並んで居られるだろうか。
「そんな事…出来ません…。」
「じゃあさ…ズルい提案だと思うけど、ツッキーにちゃんと謝って、別れてさ…本当に俺の彼女になってよ。もう無理だと思ってんなら、逃げてもいいんだよ。」
逃げる…。
このドロドロとした現状から。
蛍…から。
「ツッキーがどんだけ怒ったって、俺が守るから。俺なら、和奏が何しても許すよ。ヤキモチ妬いても、1人で心配して空回りしても、例えば他の男に心揺れたとしても…って、そんな事態にはしないんだけど!でも、どんな状況でも俺に帰ってきてくれるなら、全部許す。」
木兎さんの彼女になれば…こんなに苦しい思いをしなくても済むんだろうか。
私のそんなズルイ考えが伝わったのか、木兎さんがニコッと笑った。
「ごめん。付き合ってからって心に決めてたけど、さすがにコレは我慢出来ない…。少しでも前向きに考えてくれてるなら嬉しすぎる。」
木兎さんが頬に手を添えて顔を寄せてくる。
キス…するのか。
何だか、答えのまとまらない中で、何も言うことが出来ず、そのままキスを受け止めた。
木兎さん…本当に私の事が好きだったんだ。