第1章 小風
最近、小さな不満がある。
不満と言っても、誰かに言って解決するってものではない。
ただ…蛍がモテ過ぎる。
いや、蛍がモテるのは元々の話なんだけど、最近特にモテる。
ちゃんと付き合い出してから、数ヶ月経つが…ここ1ヶ月などは、何回告白されれば気が済むんだ!
なんて、蛍に言っても仕方のない不満が溜まっている。
最近、バレー部に入って来た仁花ちゃんに愚痴らせて貰ったことがある。
「あぁ、月島君は元々話しかけにくい印象でしたが、和奏ちゃんと一緒にいる時の月島君は物凄く優しくて…というか甘々なので、月島君の彼女になりたいという女子が殺到してるんですよ。」
なんで…仁花ちゃんはいつまで経っても敬語なんだろう…?
「それ…私は全然嬉しくないよ。」
蛍が私に優しいのは事実だ。
付き合い出してからは人前でも素直な蛍が見え隠れして、バレー部の面々もザワついていた。
「まぁ、大丈夫ですよ!月島君の甘々は和奏ちゃん限定です!実際、告白してきた女の子達への対応は氷点下だったと聞いてます。」
想像しただけで…と青くなりカタカタ震える仁花ちゃん。
氷点下の対応…想像がつく。
でも、最近そればかりでない蛍の様子を噂で耳にする事が増えた。
前までは告白の呼び出しなんて平気で無視していたのに、最近は丁寧に対応しているらしい。
いや、女の子の気持ちを考えたら、丁寧に対応する方がいいに決まってるんだけど…私の気持ちも考えて欲しい。
「皐月、悪い。テーピング直してくれ。」