第15章 花風
「ごめんなさい…。木兎さんの事は好きじゃない。蛍と…すれ違ってて…弱ってて…甘えてしまっただけなの…。こんなの言い訳にもならないよね。」
下を向いていて表情は見えないが、和奏はこんな嘘をついたりする訳がない事はわかっている。
でも…和奏と木兎さんがキスしているシーンが頭からこびりついて離れない。
ここ数日…1秒も忘れた事が無かった。
この世が終わったかと思う程のショックだったんだ。
和奏が好きだと言ってくれているのに、自分の心にどう折り合いを付けて向き合えばいいのか…わからない。
「蛍…。私…ごめんなさい。本当にごめんなさい。」
何も言わない僕に、和奏が謝罪を重ねる。
その声には涙のせいか鼻をすする音が混ざっている。
自分の心の傷をどうしたらいいのかはわからない。
でも…ハッキリしている事がある。
「死ぬかと思う程…嫉妬した。ねぇ…和奏、お仕置きだよ。覚悟は出来てる?」
和奏が一番大切だって事。
和奏が隣に居てくれるなら、それ以外何もいらないって事。
「蛍…、それって…。」
「和奏は僕の彼女だって、ちゃんとお仕置きして教え直してあげるよ。いい?」
和奏が望んでくれるなら、隣に居るのが僕の役目だ。
驚いた顔でこちらを見上げていた和奏の表情が緩んだ。
そう…、和奏をその表情にしたかったんだ。