第11章 自分に素直になる方法
何を考えて、黒尾先輩を部屋に招き入れたのか…正直自分でもわからない。
これから出さないといけない結論があるなら、
その選択肢に黒尾先輩は含まれていないのなら、
最後にもう一度だけ黒尾先輩の温もりに包まれたい。
そんな…やましい気持ちからだったかもしれない。
「少し落ち着いたか?」
そんな私の様子なんて、全く気付いていないんだろう。
そのまま…気付かないで。
黒尾先輩の鈍感さは、今の私にとっては優しさだ。
「すいません。いきなり泣いて…。黒尾先輩は…?」
わざわざ最後まで聞かなくてもわかるのだろう。
黒尾先輩が落ち着いた口調で答える。
「俺は…昨日の事謝りに来たんだよ。」
「謝らないで…下さい。」
謝らないで下さい。
私との事を後悔しないで下さい。
祈るような気持ちになる。
「は?」
黒尾先輩は何言ってるんだ?と言った顔でこちらを見返している。
黒尾先輩に嫌われたくない。
そして、私は黒尾先輩に嫌われない方法を私は知っている。
「やっぱり、私…黒尾先輩とは相性いいんだなぁって思いました。」
演じればいい。
黒尾先輩に嫌われない自分を。
ベッドに並んで座る黒尾先輩にぐっと身を寄せて、唇を添わせる。