第2章 オシオキ
「え、嘘だった?」
「うん。ごめんね。
あまりに嫌がるから、押して駄目なら
引いてみろ、的な感じで。」
「…………………。」
後片付けが終わり、部屋を出る。
澪は腰が立たなくなってしまい、
俺が背負って、柳生家に向かっていた。
その途中に別れ話になった経緯を話すと、
澪はムスリと頬を膨らませる。
「…俺、本気で心配だったのに。退の馬鹿。」
「もう、ごめんってば。
俺は澪に心底惚れてるからさ。
惚れすぎて暴走しちゃったって事で許して?」
「…じゃあ、副長とか沖田隊長とか
銀時のくだりは?」
「あれは本当だよ。
澪は知らないかも
しれないけど…。
澪と付き合う前、デートに誘うの
すっごい大変だったんだから。
それこそ、死にものぐるいで。」
……あの3人はまさに野獣だ。
俺が一瞬でも手を抜けば、
澪をすぐにでも
かっさらっていきそうなくらいに
常に澪と俺に目を光らせている。
…思い出しただけで鳥肌が立つ。
「………ふーん、ホントなんだ。」
「何?マジで浮気する気じゃないよね?」
「あはは、しないよ。でも……」
「………?」
「ううん、なんでもない。」
にこにこと澪が笑った真意を
俺は3日後に知ることになる。