第23章 過去の女
放課後の保健室。
生徒が自由に使えるようにと置かれたパソコンの前で、私は“神田美咲”について調べていた。
昨日はあれから何もする気にはなれず…部屋の明りをつけるのも忘れてソファーでうなだれていた。
佐久間さんが帰宅したのは午後8時。
どことなく元気が無い佐久間さんに、神田美咲の事を聞く事は出来なかった。
“いつ帰って来たの?”
おかえりよりも先に、佐久間さんは私の帰宅時間を気にしていた…。
「怖い顔して何調べてるの?」
パソコンへと向かう私に、愛美先生はそう笑った。
しかし、今の私が抱えている問題は“笑い事”などではない。
今まで憧れの対象であった女優が突然目の前に現れ、佐久間さんの元恋人だと言ったのだ。
今思えば…佐久間さんは神田美咲の出演しているドラマを決して観ようとはしなかった。
“俺、こういうドラマ苦手なんだよね。”
佐久間さんの在宅中にドラマを観ていて、チャンネルを変えられてしまった事もあった。
元恋人である神田美咲の姿を見たくなかった。
今思えば…そんな心境だったのかもしれない。