第10章 まばたき●
あれから佐久間さんは仕事のスケジュールを明かしてくれるようになった。
それどころか、立ち入る事を禁じられていた部屋の中でさえも見せてくれた。
防音の壁。
ギターが数本と私にはよく分からない機材。
そして、壁の棚には数え切れないほどのレコードが並んでいた。
今思えば、高杉さんはこのレコードを借りに来ていたのだと思う。
以前、佐久間さんが休みの日に紙袋を抱えて帰って来たのも、中身はレコードだったのかもしれない。
全ての謎が解けた。
まるで事件を解き明かした名探偵にでもなった気分だった。
それでも、愛美先生には打ち明けられずにいた。
もちろん佐久間さんに強要された訳ではない。
私の勝手な判断だ。
佐久間さんが私についた嘘。
その嘘は今、私が愛美先生についている嘘になってしまった。