第26章 希望へ向かう未来
「シャワー浴びてくる…悪いけどリビングで待ってて」
「……、」
それだけ言うと、リアンくんはバスルームへ消えてしまった。
様子がおかしかった彼…何かあったのかもしれない。
それに…
(リアンくんから甘い香水の匂いがした…)
恐らく…いや、明らかに女性ものの香水だ。
出掛けた先で誰かの匂いがうつってしまったのかもしれないが、触れ合う事もなくあんなにしっかりとうつるものだろうか…
(…何考えてるの私)
彼にも"付き合い"というものがあるのだ。
例え女の人と会っていたとしても、きっと何か理由があるはず…
そう思い込もうとした。
けれど…
(リアンくん…全然嬉しそうじゃなかった……)
「いつでも来ていい」と言われたから合鍵を使わせてもらったけど…迷惑だったのかな?
"きっと喜んでくれる"なんて思っていたのは私の自惚れ…?
モヤモヤしながらリビングのソファーに座って彼が戻ってくるのを待つ。
さっき振り払われた手に視線を落とすと、気分は更に落ち込んでしまった…
「…待たせて悪かった」
それから15分程して彼がリビングへ戻ってきた。
その表情はやはりどこか暗い。
「何かあったの?」と聞こうとした瞬間、ぎゅっと力強く抱き締められた。
「っ…、リアンくん…?」
「…アンタにひとつお願いがある」
「…?」
そう呟いた彼は一旦体を離し、とんでもない事を言ってくる。
「…俺の事…ぶん殴ってくれ」
「えっ…?」
「そうでもしてもらわないと俺の気が済まない」
「ちょ、ちょっと待って…話が全然見えないんだけど……」
そう返せば暗かった彼の表情が更に曇った。
その顔はひどく悔しそうにも見える。
「俺…アンタ以外の女にキスされて、フェラまでされて……我慢出来ずにイった…」
「………」
告げられた言葉の意味がすぐには理解出来なかった。
それは…他の女の人と"そういう事"をしたという事だろうか?
「ど、どういう事…?浮気したって事…?」
「………。俺の気持ちはどうであれ…体が悦んでたのは事実だ」
「……、」
(嘘でしょう…?どうしてそんな事…)
「リアンくん…私の事嫌いになった?それとも…」
「違う…!」
「じゃあどうして…」
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