第13章 弄月
「ん…。と…え?蛍?」
慣れない浮遊感と振動に、ゆっくりと目を開けると、
久しぶりに近くで見る蛍の姿が映った。
あれ…?
確か…合宿中で…。
第3体育館でまだ自主練してる人達がいるから、呼んでくるように頼まれて…。
行ったら、蛍が梟谷と音駒のW主将達と自主練してて…。
ゆっくり記憶を辿る。
そして…今は…
「あれ?私…。え?何でお姫様抱っこ!?下ろして!下りる!!」
何で、蛍にお姫様抱っこされてるの!?
「はぁ…。大人しくしてて。和奏はさっき体育館で気を失って倒れたんだよ。今は医務室に向かってるところ。昨日から体調悪いくせに無理するからだよ。」
え?私、倒れたの?
確かに…体調は悪かった。
先週、初めて交わってから、飛雄は毎日求めてきた。
少し…疲れてきていたが、
飛雄が今までいっぱい我慢してくれてた事を思うと、断る事も出来なかった。
そういえば、少し前に自主練せずに帰宅する蛍に聞いた事がある。
「ねぇ、蛍は日向くんや影山くんみたいに残って練習しなくていいの?」
そしたら、蛍は少し呆れた様子でこちらを見て言った。
「僕はあの変人コンビみたいなスタミナ馬鹿じゃないからね。張り合って、こっちがペース乱したら意味ないでしょ。」
スタミナ馬鹿に付き合って、ペース乱しちゃうってこう言う事か。。。
まぁ、行きのバスでぐっすり寝れば大丈夫!
なんて、気楽に考えていた。
でも、バスで寝るのは元々苦手だし、
合宿は当たり前だけどハードで…倒れちゃったのか。
「…迷惑かけてごめんね、蛍。」
迷惑をかけて、怒っていないだろうか?
私を運ぶ蛍を見上げる。
お姫様抱っこ…恥ずかしいよ。。。
「別に。僕は練習で疲れてるんだから、悪いと思うなら、大人しく運ばれてなよ。」
こちらを向いていた蛍が、わざと視線を外して前を見つめながら言った。