第6章 半月
朝のは…やり過ぎた。
学校で行為に及ぶのは初めての事で、黒板に書かれた化学式なんて頭に入らないくらい反省していた。
とにかく…和奏に謝ろう。
[朝から無理させたね。あの後、ちゃんと授業出れた?]
謝罪の言葉が一言も入っていないが、和奏なら理解してくれる。
幼馴染の特権だと思うと少し前向きな気分になる。
そもそも、菅原さん相手に嫉妬する必要なんてない。
和奏の事を一番よく知っているのは僕なんだから。
そんな余裕も2限目が終わる頃には無くなってきた。
なんで…既読にもならないんだ?
何度目かのLINEチェックをするが、先程から全く変わらない画面。
[ねぇ。既読にもならないとか…まさか家に携帯忘れたりしてないよね?]
堪らず次のメッセージを送る。
朝練後に携帯を使って呼び出したんだから、家に忘れた訳じゃない事はわかってる。
和奏の教室まで確かめに行けばいいだけなんだけど…
LINEを見てくれないって事は、やっぱり今朝の事を怒ってるのかもしれない。
…自業自得だけど。
[ねぇ。いつまで無視するつもり…?]
昼休みになり、既読のつかないメッセージを更に重ねていると、廊下から煩い声が聞こえた。
「おーい。月島!!皐月さん、どこ行ったかしらないー?」
「あっ、ツッキー。日向が来たよ。」
「煩いよ、山口。いちいち言わなくても、見ればわかるから。あと、和奏なら教室に直接いった方が早いんじゃない?」
和奏がどうしているのか…なんて、僕が一番知りたい。
「月島も知らないのかー。皐月さん、朝練の後から授業出てないらしいんだよ。」
「え…」
それは予想外だった。
和奏は授業をサボれるようなタイプじゃない。
真面目な上に、ビビりなのだから。
そんな和奏が授業に出てないなんて…やはり、今朝のがやり過ぎたんだろうか。
午後は早退して、すぐに和奏の家に行こう。
「しかも、影山まで授業出てないんだよ。何かあったのかなー?先輩たちが何か聞いてるかもしれないから、俺、確認してくる!」
え…王様と一緒なの…?
なんで…?
隣で山口が何か騒いでるけど、それどころじゃなかった。