第4章 風月
どれくらいの時間、その温もりに包まれていただろう。
「ごめん…。私のせいで…影山くんまで遅刻…。」
1限目のチャイムなった記憶はないが、
涙の残る目元をぬぐいながら、時計に目をやると、間も無く1限目の授業が終わる所だった。
「別に…。それより…。」
大丈夫なのか?とは影山くんは言わなかった。
きっと大丈夫なわけないって、わかっていたから。
「ありがとう。もう大丈夫だよ。」
無理矢理にでも笑って答えると、影山くんがいつもに増して難しい表情をした。
「いくぞ。」
これから…どうしようか…。
そう考えていた私の右手を掴むと、歩き出す影山くん。
でも…教室の方角ではない。
「え…どこに行くの?」
「俺が知るか。ボゲェ。」
え…。
思わず立ち止まると、影山くんも慌てた様子で振り返る。
「わ…悪りぃ。言い方間違えた。俺も…どこに行くとか全く考えてなくて…。こういう時、どこに行くべきか、検討もつかないけど…まだお前と2人で居たい。皐月はどこに行きたい?皐月の行きたい所なら何処でも連れてってやる。」
思わず…笑ってしまった。
少し耳を赤く染めながら、しどろもどろと喋る影山くんが、
昔の素直じゃないけどわかりやすい蛍と重なる。