第17章 満月
心地の良い微睡みに身を任せていると、
おでこに温もりを感じて、ゆっくり目を開けた。
「ごめん。起こしちゃったね。」
せっかく起きたから、もう一回…なんて、言いながら蛍が私の額にキスを落とす。
なんだか、凄くくすぐったい。
「蛍…キスしたい。」
我ながら凄く甘えた声が出たが、
蛍が嬉しそうな表情をするので、こういうのもいい気がする。
「そんなお願いなら、いくらでも叶えてあげるよ。」
チュッとリップ音を鳴らしながら、蛍がキスしてくれる。
例えば、こういう気持ちが積み重なって、幸せになっていけるんだとしたら、
やっぱり、この気持ちは蛍と分かち合いたい。
遠回りしないとわからなかった事…確かにあるだろう。
蛍への気持ち。
蛍の大切さ。
隣にいるのが当たり前じゃないと理解したからこそ、
隣にいる事が尊く思える。
この気持ちを忘れずにいたいと思う。
「ねぇ、蛍。もう一つ叶えて欲しいお願いがあるの。」
「なに?あんまり無茶なのだったら却下するよ。」
蛍が手のひらを私の頬に添わせる。
「ずっと私の隣に居て…大人になったら、結婚してくれる?」
蛍が少し目を見開いた後に、優しく微笑んだ。
「当たり前でしょ。」
蛍の答えと共に、優しいキスが降り注ぐ。
幼い頃の約束を、もう一度ここから始めよう。
隣にいる事が尊くて、当たり前な未来へ。
end.