第17章 満月
「影山、今日は皐月さんと一緒に来なかったのかー?喧嘩ー?」
体育館に日向くんの声が響く。
「おっ、喧嘩か?」
「チャーンス!!」
何故だか西谷さんと田中さんが盛り上がっている。
私は少し気まずい話題で、影山君から視線を外した。
影山くんとお別れをしたのは今朝の事だ。
私が一方的に悪いのに、一つも私を責めることのなかった影山くんを思い出すと…胸がいたむ。
そして、この痛みさえも自己中心的なものだなぁと思う。
それでも…チラッと蛍の方を見ると、蛍もこちらをじっと見ていた。
あの後、影山くんとどうなったのか、蛍にもまだ話せていないのだ。
「俺、皐月とは別れました。」
体育館に居た全員に聞こえる様な宣言だった。
「「「え?」」」
体育館に居た全員が影山くんを見て、そして、盗み見るようにこちらを見た。
いや、流石に盗み見るのは状況的に無理だろうけど。
わーわーと盛り上がる中で、感の良さそうな何人かの先輩達は蛍の方を確認してる。
当の蛍は、騒ぎには我関せずな様子でストレッチをしていた。
「和奏ちゃん」
騒ぎを聞きつけた潔子先輩がこちらに駆け寄ってくる。
「あの…すいません。お騒がせして。部活には影響のないように心掛けます。」
部内で付き合って、別れた上に、気まずくなりました…では、周りに迷惑だろう。
マネージャーを続けろと言ってくれた影山くんの期待を裏切らない為にも、しっかりやらないと。
潔子先輩にペコっと頭を下げる。