第16章 佳月
「私、やっぱり蛍が好き。蛍じゃないとダメだって…今更だけど、わかったの。。。私が悪いの。影山くんの事、巻き込んで…。許せないと思う。影山くんが私の事、見たくもないなら…クラスは無理だけど…バレー部のマネージャーは辞める。」
想像してた通りの、そして最悪の返答だな。
「でも、影山くんと蛍はチームメイトだから…。蛍は本当に悪くないの。私が蛍の気持ちに気付かずに…逃げ回ってたせいで、影山くんにも、蛍にも…。本当にごめんなさい。」
こんな時にも、月島の心配かよ。
でも…和奏にとって一番は常に月島だった。
俺と付き合ってたって…ずっと。
だから…。
頭をさげて、顔の見えない和奏を引き寄せて、抱き締める。
「泣くなよ。もう、謝らなくていいから。」
「影山くん…。」
俺の為なら泣かないでくれ。
俺がお前の涙を止めたいって、そんな俺のわがままを最後くらい叶えさせてくれ。
「和奏は月島は悪くないって言うけど…、やっぱり俺はあいつのした事が許せねぇ。これからだって、和奏が月島に泣かされないかって心配でしょうがない。」
何とも言えない表情をしている和奏。
もう最後かもしれないと思うと、抱きしめている腕に力が入る。
「だから…一番近くでお前らの事見張ってるつもりだ。だから、マネージャーも辞めんな。月島や、他の奴に泣かされる様な事があったら…俺が一番に抱きしめてやれる距離に居させてくれ。」
平気だ…なんて、強がりでも言えないけど、
和奏が笑う為なら、少しくらい痛いままでも我慢出来るから。
「影山くん…。」
「なぁ、もう一度だけ名前で呼んで。そしたら、ちゃんと別れてやる。」
「…飛雄、本当にありがとう。」
和奏が泣きながらも、にっこり笑った。
今まで見た中で、一番いい笑顔だな。
これから先、この笑顔が曇る事がないように。
それだけを願いながら、ギューっとキツく抱きしめた。
俺の方こそ…ありがとう。