第15章 三日月
「僕に嘘つく必要ないんだけど…。とりあえず、聞いて。」
僕のせいでなければ、さっきの反応はあり得ないでしょ。
和奏の嘘なんか、目を瞑ってても見破れる自信がある。
「違うの。私が…、私が悪かったの。蛍の事なんて、全部わかっているつもりで、本当は何もわかってなくて…。飛雄まで振り回して、傷付けた。」
予想していた話と違い過ぎて、何を言っているのかサッパリわからない。
ただ…目の前の和奏から流れ落ちる涙を無意識にすくい取る。
「ちょ…泣かないでよ、和奏。」
「ごめんなさい。蛍…ごめんなさい。」
何で…和奏が僕に謝っているんだろう。
相手のことをわかっているつもりで、本当は何もわかってなくて…って、そんなのそのまま全部僕の台詞でしょ。
泣き止まない和奏を抱き締める。
「泣かないで、和奏。何を謝ってるのかはわからないけど…いい加減、僕にも謝らせてよ。」
和奏の嗚咽だけが聞こえる。
「僕、和奏に酷いことした。…反省してるんだ。本当に…。和奏の気持ちなんて…全然考えてなかった。和奏は何も悪くないよ。全部、僕の勝手な我儘なんだから。許して欲しいなんて…言える立場じゃないんだろうけど、許してもらえるなら、何でもする。」
一気にそう伝えると、和奏がゴソゴソとこちらを見上げる。
こんなにぐちゃぐちゃになる程泣いているのに…
それでも可愛くみえるんだから、本当に末期症状だ。
心臓があり得ないくらい脈打ってるのに、
そんな余計な事だけは考えられるなんて。
「蛍は…本当に、私の気持ちなんて全然考えてない。」
覚悟はしていたけど、心臓が裂けそうになるってこういう気持ちだろうか。