第14章 煙月
「和奏ちゃん来てない?」
遠慮がちなノックの後に、清水先輩が顔を覗かせる。
「え?先輩と一緒に片付けしてたんじゃ…?」
内容が内容だけに清水先輩に駆け寄る。
後ろから3年生が寄ってくる。
「そうなんだけど…第三体育館に自主練組み呼びに行ってもらってから、見かけてなくて。」
「女神降臨ー!」と沸き立つ2年は、俺も清水先輩も無視する方向だ。
すぐに携帯を取り出して、和奏に発信する。
何コールか無機質な音が流れた後に、留守番電話に繋がる。
嫌な予感しかしない。
俺の嫌な予感をより強めるかのように、日向が呑気な声をあげる。
「でも、第三体育館って事は、木兎さん達と一緒に月島も練習してたんじゃないですかー?きっと皐月さんは月島と一緒だから、大丈夫ですよ!」
「ちょ…日向。」
菅原さんが日向の口を後ろから塞ぐが、既に手遅れだ。
日向は何もわかってない。
月島と一緒に居るのが、一番危ないってのに。
「俺、探して来ます。」
居ても立っても居られずに、部屋を出ようとしたところをキャプテンに止められる。
「皆で、手分けして探した方がいいだろう。」
その通りなのかもしれない。
でも…と、頭に浮かんでくる体育館裏での和奏と月島の行為。
「俺、1人で探します。先輩達は来ないで下さい。」
ペコっと頭を下げて、走り出した。
どこに行けばいいのか、検討もつかないけど。