第1章 ~春~ 4月
限られた人生の中で
こんなにも愛する人が出来るなんて……
想像もしていなかった
病院の一室で、リヴァイはベッドに横たわる女性を見つめていた。
先の壁外調査から帰還して数週間。
なんとか……なんとか返って来てくれと。
どれだけ願った事か……
「とんだクソ野郎だな、てめぇは」
その声は静な病室に溶けてゆく
もう一度 その瞳で見つめて欲しい
もう一度 その声で名前を呼んで欲しい
そして 思いきり抱きしめて……甘やかしてやりたい
それでも
彼女がようやくその重責から解放されたのなら。
それも『悪くない』と思う。
彼女の髪を撫でれば、その感触はあの時のまま。
それがまた虚しくて。ギリッと奥歯を噛み締めた。
リヴァイはその赤い唇に、触れるだけの口づけを落とすと一言。彼女の耳元で囁いた。
「愛してる」
これからは、彼女のいない世界で生きていく。
こいつの意志は無駄にしない。
お前の思いも共に、俺は刃を手にとろう。
「……じゃあな」
リヴァイは指先で白い頬を撫でると、
無機質な病室を後にした。