第4章 【ミステリア~Kato side story~】
5年越しの恵麻は
俺の知らない男の香りを纏ったまま
人混みに消えていった―――。
……恵麻、
今はその男の腕に抱かれてるのか…?
俺の知らない男の残り香に
嫉妬で気が狂いそうになる……。
あのとき、
自分のプライドに拘った俺には
嫉妬する資格なんてないのに。。
恵麻、
君にとっては今日の出逢いはただの偶然で、
俺のことなんて5年間忘れていたんだろう。
だけど、、俺は違う…。
別れてもなお、大切で。
別れたのに、逢いたくて。。
君を忘れた日なんて
1日だってないんだ―――。
君と別れてから、
それなりに女性と経験を重ねた俺だけど、
君のいない世界は
無声映画みたいで。
いつも人混みに君の姿を
探し求めてしまうんだ……。
悪い女って…
どんな女性だと思う?
男にとって
一番大切なプライドを捨ててまでも
独占したいと思わせる女性…。
別れても忘れさせてくれずに
もう一度この腕に、と
切望させる女性……。
……恵麻、
僕にとっての君だよ…。
高2の冬、
2人で迎える初めてのクリスマスに
浮かれすぎて何も見えてなかった俺。
キミにどうしても指輪を渡したくて…
その為に必死でバイトをしていた俺。
恵麻の驚いた顔が見たくて
バイトをしていることは秘密にして。
ただただ、恵麻に喜んでほしくて……。
気付けば恵麻に逢う時間よりも優先して
君に淋しい想いをさせてしまっていたんだ…。
クリスマスの1週間前、
『加藤くんの考えてることがわからない。』
とフラれたのは俺。
そして、
プライドが邪魔して
追いかけることができなかったのも俺―――。
もしもあのとき…
なんて意味のないタラレバを
考えてしまうなんて、
俺も焼きが回ったな…
なんて独り、
空を見上げて苦笑する……。
俺の質問に幸せだと答えた恵麻。
俺はその言葉を信じて…いいんだよな?
今、君が幸せならいいんだ。
俺の出る幕なんてない。
だけど、もし…
もしも今、君が泣いているのなら
そのときは……
俺のプライドなんて投げうって
君の全てを奪い去るよ、今度こそ。。
そう思ってしまう俺を、
赦してくれますか……?