第5章 トラウマ
奥多摩から帰って初出勤までに図書隊内に“クマ殺し笠原”の異名が流布していたと同時に
その裏では“色仕掛け佐々木”という異名も流布していた。
そんな言葉を聞くたび『別に色仕掛けしてへんもん……』ボソッと呟くしかないのが…
しかも、色仕掛けっていう人聞きの悪い言葉がちょっと腹立たしい。
まぁ、ウワサもすぐ消えるだろうけど。
『はぁ…』
ため息をつきながら、部屋着から服に着替えた。
今日から図書館業務が始まるため、制服ではない。
だからといって私服っていうのも気になったので、とりあえず夏用のジャケットにパンツといったスタイルにした。
『よし、気を取り直して今日もがんばる…やね!』
わたしは少しでもどこに何があるか把握するため、早めに書庫へ向かう。
誰もいない書庫をぐるっと一回り。
分類がどうなってるのか見て回る。
『…なるほどね、なんとなくわかってきた』
メモしても意味はないし、頭の中に叩き込む。