第11章 初デート③
「あー、楽しかったね!」
「まだやっていないものがありますよ。」
「え?」
一通りゲームを試したものだと思っていたが、施設の置くの方に人だかりが出来ていて、その周辺にあるものはまだ試していなかった。
「あの箱形の機械は何ですか?」
「あー、あれか。あれはプリクラだよ。」
「プリクラとは何ですか?」
「写真を撮る機械で最近中高生の間で人気なんだ。」
「写真を撮るだけなら携帯電話でも出来ますが?」
「うーん、そうなんだけど…いつもと違う写真が撮れてシールで機械から出て来たり、その時の楽しい気持ちを特別な機械で撮影出来て、最近ではスマホに動いた写真が送られたりもするんだよ。」
「楽しい気持ちを携帯電話に保存が出来るのですね。それは少し魅力的ですね。」
「…撮ってみる?」
私の顔を覗き込んで来た小林くんの顔は相変わらず優しい笑顔で心臓が跳ね上がった。
「はい。今のこの気持ちを保存出来るならぜひ。」
私たちは自然とお互いのつないでいた手をぎゅっと握り直した。
そのまま歩みを進め、プリクラを撮る機械の中へ入った。
「案外狭い作りになっているのですね。」
外から見た様子では大きく感じていたが、実際中に入ると二人の距離が必然的に近くなる程の狭さだった。
(別に嫌な訳ではないですが、ここまで近いと緊張しますね…)
「神崎さん、好きなフレーム選んでくれる?」
(神崎さんとほぼ密室状態なんて理性保てるかな…)
フレームを選べ終え、撮影に映ると後ろの壁にグリーンカーテンが引かれた。
「なるほど、これで背景を返る訳ですね。」
「神崎さん!前見なきゃ!」
『グイっ』
「キャッ」
腕を引っ張られたかと思った瞬間、フラッシュが光り思わず目を閉じてしまった。
目を開けるとそこは真っ暗で、身体はぬくもりに包まれていた。
何が起きたのか理解出来ずにいると、再びフラッシュが焚かれる。
「小林くん…?」
「っごめん!」
目の前が小林くんで埋まっていた為、きっと抱き締められたのだと理解出来た瞬間、頬に熱が貯まるのが分かった。
「ぃ、ぃぇ…」
小林くんの顔を見るのが何だか恥ずかしく感じ、俯き加減に情けない返事しか出来ない。
(私はどうかしてしまったのでしょうか、今までにないくらいドキドキしてしまってカメラさえまともに見れません…)
