第3章 後編 愛する彼女と死の外科医
祭りから帰ってくると、疲れた子供たちを先に寝かしつけて、彼女は絵本を見ていた。
「……なにしてるんだ?」
するとそこへ彼がやってきた。
彼女の隣に座りその身体を引き寄せると、軽く口づけた。
「いや、この絵本の内容があまりにもぶっ飛んでるんで、もう少しソフトな内容にしようと…」
彼女は少し頬を染めると、絵本を彼に見せてきた。
そこには何とか書き直そうとしている跡が見えたが、どういうわけだかすぐに消えて元に戻ってしまうようだ。
「……別にこれでいいだろ。これがお前の物語なんだから」
彼は優しく彼女の髪を撫でた。
「…うーん。そっか…それもそうだね」
彼女は絵本を閉じると、そっと彼に寄り掛かった。
どんな物語でも、これは自分で決めた道なのだ。
それに、最後は奇跡的にハッピーエンドになってくれた。
もしかしたら、どこかであの妖精が見守っていてくれたのかもしれない。
彼女は色んな人に助けられて、今ここにいる。
彼と再び過ごせる幸せな毎日に、彼女は感謝してもしきれなかった。
「私、あたなと出会えて本当によかった。本当にありがとう!」
彼女は彼に抱きついた。
「愛しているよ」
彼女は満面の笑みで、そう彼に伝えた。
「あぁ、おれも愛している」
彼はそんな彼女の言葉に頬を緩ませた。
そして彼女の背に手を回すと、静かに口づけを交わした。
ふと絵本が光ったような気がした。