
第50章 NO DANCE NO LIVE!

「うーむ。」
腕を組んで唸る三奈ちゃんの前に、私は緊張しながら立つ。
ひと通りダンスを教えて貰って軽く踊ってみたあと、三奈ちゃんの評価を待っている。
「体力は問題ないし、安藤リズム感あるからさ。スジいいよ!凄く!」
「えっ!ほんと!?」
「ただねぇ……うーん…」
「えっ、」
「言っちゃっていいすか?」
「う、うん…っ。」
褒めて貰えたのに続く言葉が不穏で身体が固まる。
どんな言葉が続くのか、多分いい言葉ではないと想像して震える。
「自信が、なさそうすぎる。」
「えぅっ、」
「始めたばっかだから…にしても、不安げすぎるよ!」
「うぐぅっ……」
三奈ちゃんは、真剣にまっすぐ意見を伝えてくれる。
正しくて、大切な意見だ。でもやっぱり、胸に刺さって少し痛い。
だってだって、ダンスは初めてで。
やっぱり恥ずかしくて。
「では見ていた皆さんも、忌憚ない意見をどうぞ。」
「えぇっ!?」
そう言って三奈ちゃんは周りのみんなに声をかける。
「か、かわいかったよ!けど、うーん、やっぱなんかフリが小さいというか……。」
「安藤、ダンス苦手か?」
「なんかずっと困り顔だったよなぁ。」
「とりあえず首傾げんのやめなね〜。」
「はっ、ポンコツ。」
「みっ、みんなみてたの!?ひぃ〜!鬼指導〜!!」
準備中だった演出隊のみんなや、練習帰りの演奏隊のみんなから、色んな意見がかけられる。
それぞれの忌憚のない意見は図星ど真ん中。自信ないの、大正解なんだもん。どんどん恥ずかしくなって、私は頭を抱えてしゃがみ込んだ。
「ぐぅぅ…だ…だってぇ……」
「安藤って、なーんか自分に自信がないよねぇ。こーんなにかわいいのにねぇー!」
三奈ちゃんが隣にしゃがみこんで抱え込むように頭を撫でてくれる。髪がごちゃ混ぜになるのを感じる。
「振り全部ちゃんと覚えて、決めるとこビシッと決められれば大丈夫!さっきも言ったけど安藤スジいいからね!
「ほんと…?」
「自信ないなら、自信持てるまで練習あるのみだよ!!」
「うっ、うん!」
私がガバッと勢いよく立ち上がると、周りから歓声が上がった。仁王立ちになって腕を構えた。
「いっぱい練習!します!」
「おー!」
「俺らも負けてらんねぇな!」
「はっ、めんどくせぇ奴。」
みんなの声に後押しされながら、もう一度練習を始める。
練習は、始まったばかり。
