第49章 buzzっちゃったか
「安藤くん!おはよう。」
教室に入ると、まずは天哉くんがこちらを振り返った。
「あ、えへ……お、おはよう…天哉くん。」
天哉くんはいつも通り大きな声でビシッと挨拶をしてくれた。
ほっと一息付きながらそそくさと自分の席へ向かい、急いで着席する。
いつもよりも周りの目が気になってしまうのは、昨日の夜見た動画のせいだ。
「安藤おはよー!」
自分の席で小さくなっていると、電気くんが後ろから声をかけてくれた。
「あっ、電気くん!おはよう。」
いつもはこちらから挨拶をするか何となく会話が始まるかなので、電気くんから挨拶してくれるなんてまぁまぁ珍しいことだった。
振り返ると電気くんはスマホを片手にニコニコと笑っていた。
ん、スマホ?
そして彼はスマホの画面を見せながら言った。
「安藤なんか、めちゃくちゃバズってね?」
「えっ、なに、バズ……なに…?」
その画面を覗き込むと、そこには昨日見た動画。そしてのその動画の再生回数。
昨日は4桁くらいだったのが、7桁になっている。
「バズ……って…?」
「なんか、急に有名になっちゃうってこと!ほら、みてみ?」
そういって見せてくれたのは見た事のあるSNSの画面。
“日本のトレンド”っていう文字の少し下に、朝のドラマの題名、ヒーローがやってるラジオのハッシュタグ、そしてその下に『ドジっ子ヒーロー』という文字がある。
「え……え?」
「あーんどーうっ!!!!」
私が焦っていると教室の扉がとんでもない音で開く。
そして飛び込んできた三奈ちゃんがドカンと机にぶつかってくる。
「わっ!?」
「なんか凄いことなってない!??」
「えっ、えっ?」
三奈ちゃんもまたスマホの画面を見せてくる。
そこにはすっ転んでめちゃくちゃカッコ悪い時の私の写真と、それに対するコメントがわらわらわら。
『推せるかもしれん』
『鼻血出てるとこすこ』
『ヒーローとしては、如何なものか。』
『かわいそうはかわいい』
『奇跡の一枚ww』
私に対して、“その写真に写っている私”に対してのコメント。
良いと思ってくれているコメントも、悪印象を持った人のコメントも、そのどちらでもなくただ面白がっている人のコメントも、全部が滝のように流れてきた。
「…えっ、っ」
戸惑った私は、両手をぎゅっと握りしめた。
教室がザワザワしていた。
