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夢を叶える方法【ヒロアカ】

第47章 彼らが暮らした家


side 天喰環


病室で荷物を纏めていたら嫌にしょんぼりした顔の安藤さんが入ってきた。しょんぼりの理由は分かる。僕らも同じことで苦しくなったばかりだから。

「あっ、み、皆さん大丈夫ですか?」
「おー安藤!このとーり完全復活よ!」
「あまちゃんまた無理したみたいやなぁ!!聞いたで!ホンマにもー!あと前髪どうしたん!」
「え、えへへ…ちょっと、その…えへへ。」

安藤さんは前髪をおさえながら変な笑顔をした。
彼女はそんな顔をよくする。

僕らだって今はそんな気持ちになれないんだから。一緒に悲しんでも大丈夫なのに。

「安藤さん、大丈夫そう?」
「へ。……だ、大丈夫…です!」
「そっか。……別に、僕らは大丈夫だから。無理しないでいいからさ。」
「……うん…。ありがとう、ございます。」

上手く言葉が出てこないのは相変わらずだ。

安藤さんは少しだけ安心したみたいな顔で笑って、切島くんとファットさんのところにてってと歩いていった。楽しそうに談笑していた。


病院から出る前、安藤さんはぽつりと呟いていた。

「何かを変えたって、どうやったら分かるんですかね。」
「え?」
「ちょっと、思っちゃっただけで。えへへ。」

安藤さんはそうやって笑って誤魔化した。

「いつも、何を変えたかわかんなくて不安なんです。……でも、ちょっとでも笑顔、増えてたらいいなって。」
「わかんないよ。みんなわかんないと思う。」
「そう…なんですか?」

安藤さんは不安そうな顔をして、こちらを見上げる。

「自分がいない世界がなきゃ、比較できないし。」
「……そっか。確かに。えへへ、そうすね。」
「……こわいな。そんな世界。」
「……確かに。すごく怖いです。」

考えることがある。

自分が居て、この世界は何か変わったのか。
自分の存在に、意味はあったのか。

自分だけが居ない世界があって。
そこでは、自分が居なくても他のみんなは普通に暮らしていて。

考えると怖くなったりする。


安藤さんと一緒にその恐怖を共有できた。

気がした。


それからしばらくしてから、僕らは事務所に行って色々済ませて、学校でも色々と調査とか手続きとかをやった。

結局僕らが寮へ帰ってこれたのは夜だった。


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