第47章 彼らが暮らした家
そこは薄暗くて、埃っぽくて、息苦しかった。
気が付いたら私はひとり、そんな場所に立っていた。
「ここが、治崎さんの、ココロ。」
一歩足を進めるのだけでもものすごく体力を使った、気がした。
重苦しくて、寒い。
私は足を、動かした。
自分がどこにいるのか、
していることに意味はあるのか、
分からなかった。
不安だった。
真っ暗闇の中、ただひたすら、歩いた。
それしか、出来なかった。
歩いて、
歩いて、歩いて、
歩いて、歩いて、歩いて、歩いて、
歩いて、歩いて、歩いて、歩いて、歩いて、
私の足はクタクタだった。
もうどれだけ進んだのかも分からなくなった。
「はぁ…はぁ…ぁ、れ?」
そんな時だった。
膝をついて休憩していたら、かすかに光が見えた。
ろうそくの火のような、
暖かくて、どこか懐かしい光だった。
光はふらりと動き続けて、奥へ消えた。
「まって!」
私は光に向かって駆けた。
なかなか追いつけなかった。
しばらく光を追って走っていたら、家を見つけた。
古くて大きくて、立派な家だった。
光はこの中に入っていったみたいだった。
誰かが住んでいた家なんだと、なんとなく思った。誰かが大切にしながら暮らしていた家なんだって、思った。
もしかしたら秘密の隠し通路があるかもしれない。ナイトアイさんが見つけてくれたみたいな、仕掛けがいっぱいあるかもしれない。
でも、知る方法など無かった。
だから、ただノックをして挨拶をして。
そうしたら扉は開いた。
「だれかいませんか?」
当然返事はなかった。
『理想を並べるだけじゃ死に行く一方だ。何でわからない…!』
突然響いた声に振り向くと、玄野さんの顔が見えた。
治崎さんの記憶を見ているんだってわかった。
記憶の中の彼の声は、すごく焦っていて、怒っていて。
すごく、悩んでいた。
私は前を向きなおして再び歩き始める。
『ヤクザが再び裏社会を治める…まァ、現実味のない話ではありやす。』
『俺の道から外れたことはすんじゃねェよ。』
『おめェ…もう出てけ。』
治崎さんに送られた言葉を、
たくさんの想いを、私はみた。