第46章 どんなに強い者も
『敵もヒーローもみんな、ただ認めて欲しいだけなんだよ。自分を。自分が今ここに居る意味を。』
さっきの言葉がやけに頭に響いた。
玄野さんから感じとったのは、“あの人”を認めさせたいという願い。“あの人”を肯定して欲しいという願い。
誰もが認めてもらうことを求めて、誰もが必死に居場所を守ろうとしてる。
心の中の彼は、嘘つきでは無いみたいだった。
「居場所を守る為に…小さい女の子を哀しませないといけなかったんですか?」
「……」
「誰かを哀しませて居場所を作っても、その居場所はきっと、居心地なんて、よくない。」
「噂どおりのあまちゃんだな。」
私は、その言葉にまた迷った。
ここは社会で、私は子供で。
私はまた、社会のことが分かってないだけのかもしれない、と。
「ほら、こんなことしてる場合じゃないですよ。」
「はっ!」
上でのドンパチは未だ続いていて、私は慌てた。
出久くんの元へ、行かなきゃ。
彼がまた、無茶してる。
ナイトアイさんたちが、大変かもしれない。
通形先輩が大変で。
エリちゃんが。
私はまだ、こんなに元気なのに。
「はぁっ!」
「ぐっ…」
剣を地面につき立てれば、血液の結晶が地面から生えて玄野さんの体を搦めとる。
私は血液の結晶で玄野さんを完全に固めて出られないように閉じ込めた。これで針も出ないようにできたし、あとは警察さんとかに任せればいい。
「玄野さん、私。」
結晶の中の彼に少しだけ話した。
「みんなの居場所を守りたい。誰も悲しませない、なんて無理かもしれないけど、でも……私はそれを目指します。それが、その理想を掲げるのが、ヒーローなんだと思います。」
私は相澤先生を背負って、“個性”で足場を作って、さっきの穴からみんなのもとへ向かった。
先生は私を睨んでた気がしたけど、無視した。
「なに、これ…」
上に登ると、光が溢れてた。
天井は、もう無かった。
溢れる光の中で、変な光を放ちながら、出久くんは戦ってた。
傍に傷だらけのナイトアイさんを見つけて、私は駆けた。
「ナイトアイさん血がっ!」
「君……」
私は慌てて“個性”で結晶化をし、出血を止めた。
初めてこんな使い方した。
ドカドカと降ってくる瓦礫から、先生とナイトアイさんを守りながら、私はただあの戦いを見ていた。