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夢を叶える方法【ヒロアカ】

第43章 疾走するケダモノ


Side 切島鋭児郎


これは多分、夢だ。

安藤が、遠くでなにか喋ってる。

「…その……君も、す…だ…。」


水の中で喋ってるみたいだ。
ぽこぽこ、断片的に聞こえる。


嬉しいことだ、ってことは分かる。

嬉しくなった俺は、安藤の手を握った。
夢なら、いいかなって。


その手は、暖かくて。

意外と、リアルで。


「…い…ろうくんっ!あのっ!鋭児郎くんっ!!」

気がついたら、目の前には真っ赤な顔の安藤が居た。


目をぱちぱちするとだんだん覚醒していって。


共有スペースだ。
ソファがあって。玄関見えて。それで。


やっちまったって思ったのはまたこの10秒後。


「あのっ!」

ぎゅって握った手は、思いのほか小さくて暖かくて。

かわいい。


「かぜっ、ひくっ…ので、は!?」
「あっ、やばっ!ご、ごめん!!」


手を握ってるのに気がついて、思わずぱっと離した。

赤い顔が、必死に何か言葉を紡いでる。

なんか、かわいいなって。
まだ寝惚けた脳みそがそう言ってる。


確か、安藤が帰ってくるのを、待っていようと思って。それで。

待っているうちに眠ってしまっていたみたいだった。


「安藤待ってたら寝てた!わりぃ!」
「ま、まっててくれたんだ…。あ、ありがとう…。」

俺の隣で、ソファの上できちっと正座する安藤は、また少し頬を赤くして頭を下げた。


「安藤、お疲れ。無事で良かった。」


一番に言いたかった言葉を、やっと言った。

安藤は目を見開いてから下を向いて、それから小さく、うん、おつかれた、と零した。

なんか返答が面白くって、言葉どおり安藤はすんごく疲れてるみたいだなと笑った。


「…帰ったら、鋭児郎くんと話したいって、思ってて。」
「俺?」
「ライオットじゃない、“鋭児郎くん”と。」
「どっちも俺だろ。」
「ううん、違うの。寂しいから、そう思っちゃうの。」
「寂しいから?」

疲れてる安藤は、いつもよりも弱気で。
もしかして俺に甘えてるんじゃないかななんて、嬉しかった。


そのあと安藤が話したのは、なんともない普通のことだった。この間食べた美味しいもの、面白かった映画、ファットさんからたこ焼きを貰ったこと。

どれもただの、いつものお話で。

なんとなく、2分前くらいに安藤が言ってたことの意味が、わかった気がした。


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