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夢を叶える方法【ヒロアカ】

第41章 ノミの先輩と隠れる後輩


Side 天喰環


「切島って言います俺!」
「先輩!私は安藤です!」


じりじりと教室の隅へと後退する俺を、2人は意気込んだ表情で追い込む。


「インターン!」
「シップです!」


息ぴったりの声に、俺は一歩、また一歩と壁に近づく。


「い、いや、俺は…」

「お願いします!」
「先輩!」


離すものかとふたりは食いついてくる。
アマゾンのアリゲーターのように、獲物を囲んで追い詰める。

片方は強く、真っ直ぐ。
もう片方は潤みながらも、キラキラと。


「怖いな、きみら…」

「怖いって…ううん…私、頑張ります。頑張るんです!」


真っ赤な顔に、強く力を込めて、安藤は追い込んでくる。

さっきなんて、申し訳なさげに、眉をへなへなと曲げていたのに。今は瞳に眩しく焔をたたえて。

どうやって焚き付けたんだろう。
そんな疑問が浮かんだが、そんな淡いものは背が壁にぶつかったことによって泡となって消え去る。


「うっ」


背中の衝撃がじわじわと全身に広がり、すべての筋肉が緊張する。


もうダメだ。
もう逃げられない。


「…わかった。…わかったから。」

「じゃあ…インターンシップ…!」
「ファ……事務所の人によるけどね。」


3つの瞳が、ひときわ強く光る。
やったやったぞとふたりは目の前で手を取り合っている。ふたりともりんごのように頬を染め、キラキラと飛び回ってる。


「全く…恐ろしい。」


隅っこで身震いをしていると、安藤はそれに気がついてふっとこちらを向く。


「無理言ってごめんなさい。でも、先輩と同じ経験が、どうしてもしてみたかったんです。」


はにかみながら真っ直ぐ伝えてくる。
かっこいいからなあ、なんて頬をかいて。

黒目がちの潤んだような大きな瞳が、じっと俺だけを映し出す。


「…これから、よろしくお願いします。環先輩。」
「まだわからないだろ。…というかいきなり名前呼び。」

顔が少し熱いのを、教室の誰かが笑った気がした。


「せっ、センパイっ!俺もっす!」

「わかってる。」


切島もひとつ遅れて、元気に声をあげた。



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