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夢を叶える方法【ヒロアカ】

第40章 〈番外編〉我逢人




『はじめまして、キミが勝己くん?私は安藤ひなたです。これから、よければよろしくね。』


暖かく、柔らかかった。

その時の俺よりも高いところから。
その笑顔は、どこまでも。


『ほら、挨拶しなさい!こないだ引っ越してきた安藤さん。』


ふわんと短い髪を震わせて、まろい頬をピンク色に染めて、ニコニコと人の良い顔をして。

暖かくて、本当に日向みたいな笑顔だと、その時の俺は思った。


その影に隠れて、その日向に隠れて、あいつはいた。

やぼったい眼帯をつけて、小さくなって震えていた。


『それと、あんたと同い歳のひよこちゃん。』


ひよこ。

黄色くて、ふわふわと暖かく、そして脆い。
そんな動物を思い浮かべた。


ひなたさんに優しく背を押され、その“ひよこ”はおずおずと一歩前に出た。


『あの…え、と……わ、たし…』


かとんぼよりもずっと小さい声で、ひよこは鳴いた。


その時の俺にとって、とても気に食わないタイプ。

意味もなくオドオドして、声が小さく、気も小さい。


大嫌いだった。


『あんた、仲良くするのよ。』


絶対やなこった。

心の中でつばを吐いた。
嫌いだって気持ちが伝わるように、強く睨んだ。


でもひとつ、面白いところがあった。


その、大きな大きな眼帯。


それは普通の人間にはないもの。
幼い俺にはなぜだか面白くってたまらなかった。


その日から、俺たちはよく遊ぶようになった。

主に、俺が。


あの時、あいつは俺のこと、嫌いだったと思う。

俺もあいつのこと、嫌いだったと思う。


あいつの過去を知っていたとしても。
あいつの未来を知っていたとしても。


きっと、嫌いだった。


ずっと、嫌いでいると思っていた。


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