第2章 プライド×劣等感
「こらデク!!」
勝己くんは声まで凶悪で、私の鼓膜に大ダメージを与えた。
BOOOM
爆破の音も、とんでもなく凶悪だ。
「どわ!!?」
「"没個性"どころか"無個性"のてめェがあ〜なんで俺と同じ土俵に立てるんだ!!?」
「待っ…違う待ってかっちゃん」
勝己くんが手のひらから個性を出して、出久くんを恐喝する。席まで行って、席を爆破して。
彼は、無個性だ。
凄く、残酷なことだと思う。だって誰よりもヒーローに憧れている彼に、個性が無い……なんて。
ほとんどの人が個性なんていう超能力を持った今のこの社会では、無個性は生きづらい。バカにされて蔑まれて。
それでも彼は、夢を捨てなかった。それでも彼は、ヒーローを目指し続けている。
それって凄いことなんじゃないかな。夢を信じ続けられるってことは、凄いことなんじゃないかな。
それなのに、みんなは……勝己くんは……。
なんで馬鹿にするの?
「なァにがやってみないとだ!!!記念受験か!!てめェが何をやれるんだ!?」
その言葉が鼓膜をノックした。
それが挨拶だったみたいに、起爆剤だったみたいに、発射ボタンのスイッチだったみたいに。
その扉から出てきた言葉は、溢れ出して…溢れ出して
「い…いい加減に、しろ!!!」
気がついたら、
「…あ"ぁ?」
立ち上がっていた。