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夢を叶える方法【ヒロアカ】

第38章 眇の恋心





好き、って言葉が耳に入った時、心臓を何かが一突きしたような気がした。

その一突きの刺激は、じんじんとゆっくり、全身に広がっていく。



「それが、大切な話。」



笑顔だった。

でも、その顔は耳たぶまで真っ赤で、無理したような、泣くのを我慢したような顔だった。


どんな意味なのかなんて、すぐに分かる。
ずっと一緒だったから、すぐ分かる。


「そう、なんだ……」
「…うん。びっくりさせて、ごめんね。」


風の音が大きくなって、震える梢が目に入る。

ひよこちゃんの真剣な顔は、赤くて、真っ直ぐで。


ならば僕も真剣に、真っ直ぐに
伝えなければならないんだ。


嘘じゃ、絶対に駄目だ。
社交辞令でも、体のいい言葉でも、駄目だ。


本当の気持ちじゃないと、絶対に。


ならば、僕の答えは

















「ごめん。」



たった3文字のその言葉が、殴った気がした。
心が、痛みでいっぱいになった。



ひよこちゃんは、一瞬体を震わすと、


「うん…。」


と、小さく頷いた。


「僕、そういうこと考える暇、なくて。僕は…ヒーローに、ならないといけない、から」


「“最高の”、ヒーロー…だよね。」


ひよこちゃんは目を伏せていて。
それから、いたずらっ子みたいな声で言った。


ひよこちゃんのことは、分かってるつもりだ。
だから、分かるんだ。


「うん。…知ってたよ。」


ひよこちゃんのその優しさが、分かってしまうんだ。

ひよこちゃんは下を向き、続ける。



「だって私が好きになったのは、」


ずっと誰かを想うのは、


「いつだって真っ直ぐで、」


どれだけ心の体力がいるのだろうと、


「いつだってヒーローが大好きで、」


謝りたくて、でも、謝ってはいけなくて、




「いつか必ず、最高のヒーローになる、君のことだから。」




僕は一粒、涙をこぼした。



ひよこちゃんは、にっと笑った。

その顔は、僕の見たことのない顔で、僕が今まで見た笑顔の中で、一番キラキラと輝いていた。



「ずっとずうっと!応援するよ!」
「うん…。ありがとう…。」
「…私だって、負けないよ!」
「うん…!」


その瞬間は、一瞬で、永遠で。


ひよこちゃんが笑って、僕は泣いた。

ひよこちゃんは、泣かなかった。


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