第38章 眇の恋心
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少女は、石段に腰掛けて彼を待った。
大好きな彼のことを。
彼は彼女に居場所をくれた。
彼は彼女にとってヒーローだった。
彼は手を差し伸べてくれたから。救けられてもいいんだと、教えてくれたから。
その気持ちがどれだけ大切で大きなものなのか、彼はまだ知らないのだ。
それに彼女は知ってしまった。
彼の重荷を。
彼の苦しみを。
自身の悲しみにかまけて知らなかったそれに、彼女は困惑して、それから考えた。考えて考えてひとつ、決意した。
だから彼女は彼に伝えるために、待っていた。
手を伸ばしてくれたことが、どれだけ嬉しかったのか。
友達になってくれたことが、どれだけ嬉しかったのか。
彼女にとって、彼がどれだけ大切なのか。
そんな大きなことだけじゃなくて、
空が青いことも。
風の色も。
月がどれだけ綺麗なのかも。
それから、
彼のことが、好きなことも。
少しだけ涼しくなった夜の風が、彼女の頬を撫でる。空を見あげれば、夜空の星々はキラキラと息継ぎをしている。さっきの風が花々を揺らす。
それらは彼女に、二度とやってこない感情の終わりを告げている。
片想いが、終わると。
キィと扉が開く音が響く。
彼女はゆっくり立ち上がり、大きく息を吸って心に隙間をつくって。それからそちらを、振り返る。
「出久くん…本当に来た。」