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夢を叶える方法【ヒロアカ】

第38章 眇の恋心




コスチュームを脱いで、制服を着、外へ出た。


コンタクトレンズは、取らなかった。
あの人に、見せたいから。


みんなはもう帰る準備万端で、私は駆け足でその背を追った。


「安藤ー!はやくはやくー!」
「わー!ごめんー!」


三奈ちゃんの明るく大きな声を聞くと、口角は勝手ににっと上がった。


足に込める力が少しだけ強くなり、風がさっきより強く頬に当たっていく。

ほのかに、爽やかに薫る風を感じ、私はハッと気がつく。


「安藤?どこ行くのー?」
「ちょっとね!」


踵を返し、また違う背を追った。

雄英とは違う制服の、みんなとは違う、見慣れない背を。


「真堂先輩!」
「あ?」

振り返った彼は、一瞬で雰囲気が変わる。


「お、安藤さんじゃないか。お疲れ様!どうしたんだい?」
「……」


キラキラの爽やかイケメンバージョンの先輩を見て、ちょっぴり頬が引き攣った。

彼もそれに気がついたようで、すぐその饐えたキラキラを脱いだ。


「なに、なんか用?」
「あの、さっきは…さっきはありがとうございました!」


大きな声を上げると、彼はポカンと目を見開いた。


「それだけ、です。」
「それだけ…って…。」


彼はすぐに目を伏せて、
それから意地悪に口を歪めた。


「俺の合格のためだよ。勘違いしてるようだけど。」
「えぇっ!…でも、助けられたのはほんとですから!」


彼の意地悪な笑顔は、一瞬だけキラキラの笑顔に変わった気がした。饐えた匂いのしない、本当の薫風に。


「じゃあ、さようなら!」
「あぁ、またな。」


みんなの元へ駆け戻ると、今度はみんなに囲まれた。

なに、あの先輩と仲良くなったの!どういうこと!

って。

私は、どう答えればいいか分からなくて、

「ただの先輩だよ。」

と答えるほかなかった。


**


私は、バスには乗らなかった。
バスの外からみんなに手を振って、私は違う方向へと歩いた。


行かなきゃいけない場所があったから。
行きたい場所が、あったから。


一度だけ行ったことのある場所で、
一瞬だけ乗ったことのある電車だ。


私は呼吸を整えてから、改札をぬけた。


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