第37章 Let's struggle!
「勘弁してくれよ。俺はココで取らなきゃなんねぇんだって…!」
そんな言葉が、何度も私の鼓膜を貫いた。
「私も…絶対、取らないといけないんです…。絶対、なんです。」
ボールを持つ手が震えて、
最後のひとつを当てる時、同時にポタリと汗がこぼれていったのが見えた。
屈んでいた腰を上げると、付けていたターゲットがピカン青く光った。
「お、通過!」
『通過者は控え室へ』
という温度の無い声がターゲットから響いて、私たちは素直に控え室の方へと向かう。
正直、全然実感が無い。
通過、つうか、
通過したのか。私は。
それはぼーっとした頭のせいなのか。
信じられなすぎて、頭が受け入れていないのか。
その両方か。
とりあえずこのどろどろのコスチュームをなんとかしなきゃなぁと思いながら歩いていると、正面から知った顔が歩いてくるのが見えた。
「スッゲ!オーイ!」
その元気な声は電気くんだ。
勝己くんも、鋭児郎くんもいる。
ちゃんと2倍、頑張れているのかなって不安になって、勝己くんの方は向けなかった。
「うわっ!安藤なにそれ、もはや事件じゃん!凄惨な事件!!」
「あや、これは…まぁまぁ、平気だし」
私のどろどろ具合に気づいた電気くんは大きなリアクションをとって顔を青くしていた。
心配かけたくないし、私はへへへと頭をかく。
あとで鉄分取るよ、エフいー!なんておどけてみた。
「…まだまだ“個性”、慣れてないからさ、頑張らなきゃなんだよね。」
ニコッと笑いぐっと手に力を込めると、
ふらっと頭が真っ白になった。
倒れそうになったところを鋭児郎くんに助けられて、
勝己くんにアホかってバカにされた。
出久くんの方を見る余裕は、無かった。