第35章 ZERO TO HERO
「必殺…わざ?」
「あぁ、あいつらはそれを習得しようとしている。」
必殺技、という言葉はすごくすごくかっこよくて、私の頬は自然と熱くなった。
“TDL”…なんていう危ない名前の大きなドームで、みんなはぴょんぴょんバンバンぼんぼん、飛び跳ねている。
爆発があったかと思えば大きな火柱があがり、ビリビリっと電気が見えたかと思えば砂煙でかき消される。
そんな忙しない景色の前に、私はただ呆然と立ち尽くしていた。
先生の声はその喧騒にかき消されそうになりながらも辛うじて私の耳に入ってくる。
「本来なら合宿中に充分準備するはずだったができなかった。お前にとっては超圧縮訓練となる。」
「“チョウ”……」
先生の神妙な顔とそのごっつい言葉に、私は生唾を飲んだ。
「安藤はその個性、使うのか?」
「その?」
「その……与えられた個性だよ。」
先生の濁した言葉の先には、なにがある?
私にはハッキリ、聞こえた気がした。
“オールフォーワン”から、与えられてしまった個性
胸がドキリとはねて、心臓が貫かれたかと思った。
でも、私は決めたのだ。
「…はい。使います。」
真っ直ぐ先生を見つめて、
迷いなく。
「そうか…。じゃあ行け。」
「…はい。」
久しぶりに身にまとったヒーローコスチュームは、すーすーして、ちょっとだけこそばゆい。
だからフードを深くかぶって、それから私は走り出す。