第33章 A world beginning with you
轟くんのその言葉が心に届くと、
私の緊張の糸はプツンっと音を立てて切れた。
「あり……がと…う。」
「あれ?安藤泣いてる!!」
「おい轟!泣かせてんぞ!」
「おっ…。なんかわりい。」
「ちがう…違うよ!そうじゃなくて…」
なにに、緊張していたのか。
なんの涙なのか。
どうして泣いているのか。
全然全く見当もつかなかったけど、私は涙を垂れ流し続けた。
「…ひよこちゃん、改めておかえりなさい。」
「うんっ!おかえり!」
涙を流しつづける私に、梅雨ちゃんやお茶子ちゃんが駆け寄ってくれる。
優しくて、暖かい。
私の大好きなものだ。
みんなが、この場所が、大好きだ。
「このお花、ローダンセですわね。」
「ろー…なんて?」
「花言葉は……」
「花言葉!やおももオシャレ!」
ワイワイと続く言葉を耳に流し込みながら、窓の外を眺めた。
窓の外は不思議な紫色で。
青色なのに、夜じゃなくて。
明るいけれど、朝じゃなくて。
キラキラと、美しい世界。
「わー!きれい!」
「私知ってる!“ブルーアワー”っていうんだよ!」
涙のせいでいっそうキラキラと輝くその世界を。
みんなと見たその世界を。
「…わたし…一生忘れない…。」
涙で洗ったみたいなその世界。
産まれたばかりのその世界。
爆発を恐れて目をそらして、
そらしきれなくなって爆発して、
そうやって爆発した小さな世界のその先は、
思っていたよりずっと綺麗だった。
how to give up the dream ………fin
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「さーて!必殺技!」
「一徹したけど大丈夫だよね?」
「仮免取れるように頑張らないとね!」
みんなでワイワイ話をしている。
そう。
次に見える目標は、仮免試験。
そして私には、もうひとつやらなきゃならないことがある。
「勝己くん。」
「あァ?」
ソファで足を投げ出して座っている彼に、私は決意を伝えた。
「わたし、仮免取れたらさ……」
「ァんだよ。」
「とれた……ら……。」
「出久くんに告白する。」