第33章 A world beginning with you
みんなでワイワイと部屋を作り上げていく。
家具屋さんで見つけた1番安い机に、
最低限の本が入る本棚に、
昔から使っているペコペコのベッド。
みんなで運んで、設置して。
それから私の本や、カーペット、カレンダー
なんの色もなかった部屋に、順番に色がついていく。
まるで魔法のようで。
私の色だけじゃない。
みんなの色が、彩やかに暖かく。
尊くて、
かけがえのない、
信じられないほどの幸せを
時間が来ればとけてしまう
魔法なんじゃないのかな
なんて、そんな空想をした。
「安藤これは?」
「へぇ随分沢山あるのな。」
「へ?それ…は…ぁああっ!?見ちゃだめぇ!!!」
よいしょよいしょと、魔法みたいにはいかない力仕事をしていると、後から声をかけられた。
声をかけたのは範太くんと電気くん。
大きなダンボールに入っていたたくさんのノートをパラパラと眺めている。
字ズラだけなら平和だけど、私にとっては大問題。
だって彼らが読んでいるのは……
「私のっ!私の日記だよぉ!!」
私は慌ててふたりのノートに手を伸ばした。
「わっ…わりい!」
「よっ、読んだ!?」
「まぁ…ちょっとだけ…」
「むっ…うぅ…!!」
真っ赤な顔をしてふたりをきっとみつめると、ふたりは顔を見合わせて少しだけ頬を緩ます。
「でも…悪いこと書いてなかったし。」
「俺らのことべた褒めで……逆にこっちが恥ずかしくなるっていうか」
「ああああああ!!やめでぇ!!」
恥ずかしすぎて訳が分からなくなった私はふたりをぼこぼことたたいた。
「いていて、安藤あれだな!ちゃんと怒るようになった!」
「そうそう!よく怒る!」
「普通怒るよ!このぅ!!」
「じゃあこれはなんだ?」
「またなんかっ!」
赤い顔のままその声に振り返ると、冷静な轟くんの手の中には、私のたいせつな、
「それは…」
小さな花瓶があった。