第31章 A world without you
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『ひよこ?』
『うん!ひらがなで、ひよこ!』
まだ名前の無い私の子を抱いていると、普くんは一番の笑顔でそう言った。
『えぇ、ヒヨコって、鳥じゃない。』
『あぁー。でも良い名前でしょ?』
『うーん』
ひよこ、という名前には、少しだけ納得いかなかった。
確かに可愛い名前だけれど、その名前のせいでこの子が悲しいめにあったらと、少しだけ不安で。
『ふわふわで、あったかくって可愛いよ。』
『でも…』
『おひさまみたいだからさ。』
『おひさま……』
ゆっくり腕を上げて、すんとその匂いをかいでみる。
変な匂い。
おひさまの匂いだ。
自然に頬が緩んで、少しだけ頬擦りをする。
『優しい、誰かの日向になってほしいなって、思うよ。』
『うん。』
『ひよこ。……ひよこ。』
暖かくて可愛らしいその響きを、私は何度も口に出した。
『よろしくね、ひよこ。』
“ひよこ”の顔を見ると、愛おしくて心が綻んで。
『これからいっぱい、呼ぶからね。』
“お父さん”もひよこの頬を撫でる。
『これからもずっと、一緒だから。』
この子の名前を呼ぶ人が、これからきっと、たくさんたくさん増えるんだ。
大切に呼んでくれる人が、増えるんだ。
そう思うと、少しだけどきどきした。
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