第31章 A world without you
Side hero
熱く燃えたぎる男や、小粋にジーンズを着こなす男。
筋骨隆々なみんなのヒーローも。
この場にいるヒーローは皆、ひとつの目的のために集まっていた。
そこに集まった誰もが真剣で、空気までもがピリピリとしている。
「俊典。俺なんぞまで駆り出すのはやはり…」
小さな老人がしっかりとした声で謙遜をすると、みんなのヒーロー、オールマイトは慌てて訂正をした。
「“なんぞ”なんぞではありませんよグラントリノ!ここまで大きく展開する事態。奴も必ず動きます。」
「オール・フォー・ワン…」
その言葉を聞き、オールマイトは大きな手をぐっと握りしめた。
一番に憎い相手。
一番に許せない相手。
師匠の、仇。
そして、彼らに捕えられているあの泣き虫を思い出して手の力を強くした。
泣き虫のあの子は、きっと泣いている。
守るために連れてきたはずなのに。
教え子さえ、守るべきだったあの子さえ守れないなんて、と。
彼は己に腹を立てていた。
その怒りはすべて、力に変えて。
「今回はスピード勝負だ!敵に何もさせるな!」
塚内のその声にヒーロー達は一緒に気合を入れる。
「流れを覆せ!!!ヒーロー!!!」
目の前の敵に。
泣き虫のあの子に向かって。
彼らは進もうとしていた。
同じ思惑で歩んでいる、少年たちには気づかないまま。