第28章 君に伝えたいこと
次の日も、学校はなかった。
まぁ、夏休みなんだけどね。
『私、ずっと応援するよ!』
『私、がんばるね!』
いてもたってもいられなくて、僕はひよこちゃんの家へと向かった。
おばさんに、いろんなこと言わなきゃ。聞かなきゃ。
外に出れば日射しは容赦なく突き刺さり、思わず手でひさしをつくる。
目を細めてそれから少し、足を速めた。
「こんにちはー!」
扉をノックして、大きな声で挨拶をする。
玄関は、昼だと言うのに少し薄暗かった。
いつも元気なここの子供たちは、今はどこにいるのだろうか。いつもだったらすぐにかけてくるのに。
「はい。あら、出久くん。どうしたの?」
おばさんは静かにゆっくりと奥から出てきた。
いつもはすごく元気なおばさんなのに、全く元気がなく隈のある顔で現れて。
「大丈夫…ですか?」
「…ありがとう。平気。」
「無理…しちゃダメですよ。」
「大人は無理するものなのよ。」
にこりと笑ったその顔も、どうしても痛々しくて僕は下を向いた。
こんなにも、心配してくれる人がいるんだよって、ひよこちゃんに伝えたかった。
「それで、どうしたの?勝己くん、来てるわよ?」
「へ?かっちゃんが?」
続いた言葉は予想外で、間の抜けた声が出た。
ふっと下を見ると、確かに見覚えのある靴が、綺麗に揃えて置いてあった。
「かっちゃんは、どうして?」
「分からないわ。優に用事って、今2階にいるけど…。」
「優くんに?」
ますます分からなくて、少し考えてハッとした。
そうだ、優くんの個性なら。
「僕も、あがらせて貰っていいですか!?」
「え、えぇ、もちろんいいわよ。」
お邪魔します、と大きな声を上げ、靴を揃えてから2階に駆け上がった。
「優くん!かっちゃん!!」
バタンと扉を開いて中を見れば、大人びた顔でこちらを見る優くんと、優くんのパソコンを覗き込んでいたかっちゃんがいた。