第27章 once upon a time
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「消太くん!そっちお願い!」
「だから仕事中ですよ……呼び方」
「あ、間違えたー!えっと……イレイザーくん!お願い!!」
「はい」
耳によく馴染むあの優しい声と、耳の周りにまとわりつく風の音。
俺は昼の暖かな日差しの中、とん、と小さく敵のもとへと飛び込む。
相澤消太。ヒーロー名、イレイザーヘッド。
雄英高校を卒業した後、俺はヒーロー事務所丸田で働き始めた。
今は、カインドネスというヒーローのサイドキックをやっている。
「ありがとう、消太く…じゃなかった、イレイザーくん!」
「いや、礼はいいんではやく」
「あっ!」
花が咲いたように朗らかな笑顔を浮かべるカインドネスを見て、ため息が出そうになった。
彼はぬけている。
とてもぬけている。
「んだよ離せよ!俺はっ!!」
先程捕らえた敵のもとへと彼は走った。
普通ならこのまま警察送りなんだろうけど、カインドネスはひとあじちがうのだ。
「手荒な真似してごめんね。君のお話、ちゃんと聞くから安心して。」
「は、」
「君のお話、聞かせてくれないかな?」
「…はぁ。」
普さんの優しい表情に、拍子抜けした敵。俺は大きくため息をついて頭をかいた。
気候としては最高の朗らかな日。
地に落ちた花弁に気づき、桜の木の方を見上げる。
桜色は抜け落ちて、今はもう緑一色で。
暖かく、過ごしやすい、気持ちのいい日々。
普さんは、春の麗日のような人だ。
そう思うことが、時折あった。
ちらりと本人を覗けば、うんうんそっかぁと敵の身の上話で涙を流している。
もうひとつ、ため息がでた。
普さんはとてつもなくぬけていて、それでいてとてつもなく……優しいのだ。
最近流行りのヒーロー、カインドネス。
本名、安藤普。
優しい笑顔と可愛らしい童顔が特徴的で女性を中心に人気を博している(が子持ち)。戦い方はかなり特殊で、なんと敵をあまり攻撃しない。優しく声をかけ、その敵の、敵になってしまった理由をゆっくり優しく取り除く。
俺がこのヒーロー事務所丸田に来たのも、最近流行りで、対敵メインではないから。そしてこの事務所を有名にしているのも、他でもなくこの人なのだ。