第24章 涙をとめる方法
あの日も私は走ってた。
声にならない、息のような叫びをだして。
私はただひたすら、やみくもに走った。
帰らなくちゃ。
帰らなくちゃ。
私のいてもいい場所。
私の、本当の家。
裸足だった。
今までたくさん通った家路で。
地面はゴツゴツ痛くって。
風は冷たくって。
辺りは暗くて、街灯はちらほらと。
光はすぐに後ろに流れていって、光があるせいで、家の前はずっと暗く感じた。
「おかあさん……おとうさん……っ!!おとうさん……おかあさん…っ!!」
走ってたら涙が出てきて、それでも走り続けたっけ。
自分の家の、私とお母さんの部屋だったところに駆け込んで、座り込んだんだ。
そこは静かで冷たくて。
あんなに暖かかったのにって思ったら、また涙が出た。
ひとりぼっちを、経験した日。
お母さんが居なくなったら私はひとりになっちゃう。
でも、全部わたしのせいだから。
私に、泣く権利なんてない。
そう自分に言い聞かせて、背中を丸めて。
息を止めて舌を噛んだ。
その日初めて、涙の止め方を知ったんだっけ。