第21章 〈番外編〉Over The Rainbow
『___こうしてドロシーは、カンザスで愛犬トトと一緒に幸せに暮らしました。おしまい。』
読んでいた本がパタリと閉じ、優しい声の朗読が終わる。その本の表紙には、犬を抱えた女の子と、ブリキの人形、それからライオンとカカシが描いてある。
『わぁぁぁ…!おかーさん!もっかい!!』
『もう何回も読んだでしょう?ひよこはこの本、本当に大好きなのね。』
お母さんの腕の中で、私は足をバタバタと動かし目を輝かせる。
『わたし、ドロシーみたいになりたい!かかしさんとおしゃべりしたい!』
『そうだね。ドロシーみたいに素敵な女の子になれるといいね。ドロシーみたいに優しくね。』
『なるー!』
私はぎゅっと本を大事に握りしめる。
その本は、私の大好きだった物語。少女の冒険の物語だ。
『お母さんは、一緒に旅したこの3人が好きかなぁ。』
そう言ってお母さんは表紙のカカシ、ライオン、人形を指さした、
『3人は、大切なことを教えてくれたでしょ?』
『たいせつな、こと?』
『それはね___』
あの本、今はどこに行っちゃったんだろう。
随分と昔のことだから、どっかいっちゃったのかな。
あの4人は、最後、どうなったっけ。
あの物語は最後、どうなったっけ。
ちゃんと知恵を貰えたんだっけ。ちゃんと心を貰えたんだっけ。
ちゃんと勇気を、貰えたんだっけ?