第17章 コンクリートを漂流
モニタールームから出ると、廊下は意外とひんやりと冷たかった。みんなは準備とかしてるのか、人は全然いなかった。
廊下にはヒタヒタと、私が歩く音だけが聞こえて、また緊張が高まってくる。その度に出久くんに握ってもらった左手をぎゅっと胸に抱きしめた。
そして、なんとなく歩きながらプリントを読み返した。
【・お前の力で出来ることを考えて動け。】
その文字を何度見返しても、変わらなかった。その文字の答えは私が1番よく分かっているはずだ。『逃げるが勝ち』だ、って。
でも、なんだかモヤモヤするんだ。
何処か、納得出来ない。納得出来ない何かがある。
何でいつも、分からない気持ちがぐるぐるしちゃうんだろう。
なんで自分の気持ちも分からないんだろう。
なんでこんなに普通のことがこんなにも難しいんだろう。
フッと廊下のガラスを見ると、私の怖がっているみたいな変な顔が映った。
「……ううん!出久くんにもパワー貰ったんだ!今はただ目の前のことに集中しなきゃ!」
そして私はその気持ちから目を逸らした。
廊下に1人なのをいいことに、私は気合いを入れることも兼ねて、大きな声を出す。
「おすっ!!おーー!!!」
そして私は、おー!!と言いながら外へ駆けた。
左手を、大事に抱きしめながら。
廊下を歩いているのに本当に誰にも会わない。
でも、会ったらもっとダメな気がする。
このまま走り続けよう。
学校の廊下は走ってはいけません、という大きな大きな禁忌を、私は1人で犯していた。