第12章 友達と、友達のその先
びっくりした。落ちそうになったことにも、助けてもらえたことにも、それから。
男の子なんだ。逞しくて、私の身体と、違う。
そう思うとなんだか急に恥ずかしくなって、急いで離れたくなった。
そうだよ、好きな人がいるんでしょ?その人に見られたら大変だ。
でも、離れられなかった。
「……安藤さ、全然わかってねぇよ。梅雨ちゃんじゃないし。」
「えっ、鋭児郎くん?」
抱きしめられた状態で何か言われた。でも、心臓の音で聞こえない。
鋭児郎くんは、抱きとめた体勢から動こうとしなかった。背中にまわされた腕が、離れることを、許してくれない。力がだんだん、強くなっていく。
心臓の音がする。どうして離してくれないんだろう。恥ずかしいから嫌だよ。離してほしい。ドクドクいってる。
「な、あの?」
「あ……わり。」
そう言うと鋭児郎くんは背中にまわした腕を離してくれた。
でも、腕は、掴まれたままだ。
ぎゅって……力、つよい……。
驚いて彼を見ると、見たことがないくらい真剣な顔をしていて、
知らない人みたいだった。
「あのさ、大切な話っていうのはさ、俺の事だったんだよな。これから色々と忙しくなって、多分言えなくなると思うから今、伝えようと思って。」
「いま…?」
「安藤。」
「は、はいっ!」
「俺、安藤のことが好きだ。」
「へ…」
「俺の好きなやつって、安藤だ。」